怪談えほん

怪談えほんコンテスト 大賞受賞の言葉

「怖いの見ると、ひとりで風呂に入れなくなるよ。」子どもの頃、心霊番組やホラー映画を見る僕に母がよく言いました。そうなるかもと思いつつ「大丈夫だよ」と答え、結局、風呂に入れない、夜中のトイレには付き合ってもらう、暗い廊下や部屋の隅の暗がりに勝手に想像の世界を広げてしまう、そんな子どもでした。 「こっちをみてる。」も、読んだ子どもたちが、そういう空想や想像を膨らませるきっかけになったら嬉しいなと思います。もちろん、たっぷりと怖がってくれたら、とも。

 

正直、応募総数3011作品の中から大賞に選ばれたということに、現実感がありません。これまで30人中の1人にも選ばれたことがない僕にとって、あまりに途方もない数字です。大変失礼ながら受賞連絡の電話をとることができず(勿体ないことをしたと今も後悔しています)、第一報がメールだったことも影響しているのかもしれません。先日、岩崎書店の担当の方々と直接お話しをしたことで、ようやく現実味が出てきたところです。

 

コンテストを通して、選考委員の作家先生方、岩崎書店の方々に自分が書いたものを読んでもらう機会を得ることができました。昔から本に親しんでいた人間にとって、こんなに嬉しいことはありませんでした。それに、自分と同じように怪談が大好きな人が沢山いることを、改めて知ることができました。自分が応募した6作品以外の3005作品、読んでみたい!!

 

この先、作品がどんな絵本となってゆくのか、その過程でどんな経験ができるのか、楽しみでしかたありません。完成した怪談えほんを手に取った人たちが、どんな風に感じてくれるのか。前述したとおり、昔の僕のように、読んだ子どもたちが大いに怖がり、自分だけの空想を広げてくれるきっかけになったら嬉しいです。

 

最後に改めて、作品を評価してくださった選考委員の先生方、岩崎書店の関係者様、子どもの頃に僕を怖がらせてくれた怖い話たち。文句を言いつつトイレに付き合ってくれた母、父、僕よりも早く1人でトイレに行けるようになった肝の据わった弟にお礼を言いたいと思います。本当にありがとうございました。

となりそうしち